睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は医学的には「睡眠関連呼吸障害」に含まれる病態です。
一般的に「睡眠障害」は精神科領域で診療しますが、SASの治療が「生活習慣病の予防」にもつながるため内科領域でも関心の高い疾患になっています。日本国内にはなんと300万人以上の患者がいるとも推計されています。怖い病気に聞こえますが考え方を変えると、眠気を改善させると健康増進のチャンスにもなるということですね。
起きているときは苦しくなくても、睡眠中に息が止まってしまう。
詳細は「睡眠時無呼吸症候群の原因」の章に譲りますが、口から覗ける範囲の組織(軟口蓋・口蓋弓、口蓋垂、扁桃腺、舌)が原因で呼吸の通り道が狭くなってしまうことで起こります。いびきが最重症化したとき無呼吸になります。
睡眠の障害により日中に眠気を引き起こします。2012年に関越道・藤岡ジャンクション付近で起こったバス運転中の事故は覚えている方も多いのではないでしょうか。運転手は精密検査の結果、重症の睡眠時無呼吸症候群だったことがわかりました。
日本の横断研究では、中等症以上の患者では、そうでない人と比べて約2.4倍多く事故を起こすという報告があります。適切に治療を行うと眠気が改善し、事故の発生率は下がります。
閉塞睡眠時無呼吸症候群に起因する日中の眠気は適切な治療によって改善する.適切な治療を行うことを推奨する.(エビデンスレベル:B)
参考:睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020 CQ10-2
また眠気だけでなく、睡眠時無呼吸症候群は生活習慣病(糖尿病・高血圧症・脂質異常症)との関わりも大きいことがわかっています。特に高血圧症、糖尿病は独立した危険因子である可能性を示唆されています。「メタボだから糖尿病」ではなく、「痩せているのに糖尿病」という方の一部は睡眠中に無呼吸が続いているかもしれません。