もくじ
はじめに:いびきは悪化すると睡眠時無呼吸症候群になる
いびきはは呼吸するときに空気が通る通路「鼻→のど→気管→肺」のどこかに狭い箇所が存在し、睡眠時に目立って呼吸障害(いびき音)をもたらします。
いびきをかく人・かかない人がいますが、その違いはずばり「鼻→のど→気管→肺」の”どこか”が狭くなりやすいかどうかで決まります。
いびきがさらに悪化すると「閉塞性睡眠時無呼吸症候群:OSA」という病態になります。「睡眠時無呼吸症候群:SAS」の診断を受けたほとんど(95%)の患者さんはOSAという病態です。
今回は、いびきをかきやすい特徴を5つご紹介しようと思います。当てはまる人はそれを妨げる予防策や、レーザーやCPAPなど医療機関での治療により改善を目指すこともできます。最後までご覧いただき自分に合った治療を見つけましょう。
特徴①:肥満
原因:日本人は痩せていても無呼吸になりやすい
一般的には、肥満になるほど無呼吸になりやすく、特に内臓脂肪型肥満(メタボ体型)は睡眠時無呼吸症候群ののリスクを上昇させます。大阪大学で行われた研究(※1)で、肥満体系の人のCT検査を行い、「内臓脂肪の量」と「睡眠時無呼吸症候群の睡眠時無呼吸症候群の有無」を調べたところ相関関係があることがわかりました。
また、アジア圏のOSA患者の平均BMIは27.7という報告があります(※2)。実は、この数値は欧米人のOSA患者のBMIに比べると低いです(痩せています)。その理由は次の「②顔立ち」でお話します。
予防策:減量
食事・運動習慣の見直しなどの生活指導が原則です。
具体的には身長から基礎代謝を算出しおおよその「食事摂取量」を測定し、その範囲内で食事管理を行います。
例えば、身長170cmの男性の基礎代謝はざっくり1600Kcal
※(身長)*(身長)*22*25=1590Kcal
また有酸素運動によるカロリー消費も有効な手段です。例えば、一生懸命な「きつすぎる運動」は無酸素になりがちです。「目標とする心拍数」を年齢から算出し、30分-60分を目標にジョギングや電動バイクを行うといいでしょう。
例えば、45歳の方なら120/分程度の心拍数を目標にしてみるといいでしょう。
※(220-年齢)×0.7=122.5/分
特徴②:顔立ち(軟口蓋・口蓋垂・口蓋弓の弛緩と舌根の沈下)
原因:「はな」「のど」の狭窄
「①肥満」でもお話ししましたが、太っているほど無呼吸になり易いのですが、欧米のOSA患者に比べアジア圏の患者さんは痩せていても無呼吸になりやすいです。なぜでしょうか?
実は日本人は小顔で顎が後退しており、顔貌により上気道が狭小化しやすいことが示唆されています。
メタボ体系出ないなら生活習慣病のリスクは高くないんじゃないか?
残念ながら、大柄な欧米人のOSA患者と大きな違いはなく、肥満体系ではなくても生活習慣病のリスクはあります。標準体重でも無呼吸の心配があれば検査を行ったほうがいいでしょう。
上記のように顔の特徴上、日本人はいびき・無呼吸を起こしやすく、口腔内の診察でも小顔で舌が大きい症例が多いです。
無呼吸の検査では、「10秒以上の呼吸停止の回数」や「血中酸素飽和濃度の低下」などを調べて睡眠時無呼吸症候群を「軽症〜重症」に分別していきます。
↓無呼吸の検査についてはコチラ
※睡眠時無呼吸症候群の診断に至らない症例でもいびきで困っている患者さんは多く「習慣性いびき症」という診断になります。
予防・治療:マウスピース・CPAP・レーザー・手術
症状に合わせた保険診療の治療(CPAP、マウスピース)をご提案します。CPAPは長期的に継続する治療です。継続中の適切なカウンセリングが必要なため相談しやすく「この人の話なら聞いてみよう」と思える医療者のいるクリニックへの通院が望ましいでしょう。
また、軽症や単純性いびき症を含めたすべての症例に「レーザー治療(Ed:YAGレーザー)」や「口蓋垂を切る(軟口蓋形成術)」などの治療オプションを行っている医院もあります。
※一部自由診療。あくまで保険診療の治療(CPAP・マウスピース)に併用する治療
↓それぞれの治療についてはコチラ
特徴③:性別
原因:顔立ち・社会的要因・女性ホルモン
睡眠時無呼吸症候群の患者は男性が多く、女性の2-3倍程度と言われています。原因ははっきりとはわかっていませんが、米国胸部学会に掲載された疫学調査によると
- 顔立ちの男女差から
- 女性は男性に比べで「いびき・無呼吸」を主訴に受診しにくい
- 女性ホルモンの影響(閉経後のほうが男女差が埋まる傾向にあるため)
などがいわれています。②のような社会的な認識による可能性を指摘されているのは面白いですね。同様に「男性は女性にイビキや無呼吸を指摘しづらいからではないか」という内容もありました。
予防:別の方法から
他の原因による治療を優先すべきでしょう。
特徴④:飲酒・喫煙
原因:上気道粘膜への炎症
飲酒・喫煙は粘膜下へのストレスとして上気道粘膜の炎症により気道狭窄が起こる可能性が示唆されています。例えば喫煙者は一度も喫煙をしたことのない症例に比べ2.29倍いびきをかきやすく、さらに中等度以上の睡眠呼吸障害に関しては4.44倍多いことが報告されています(※3)。また飲酒により舌根を支える咽頭筋群の弛緩を引き起こすため「その日」のいびきを悪化させます。旅行先で会食翌日にいびきが指摘されるのも納得です。
予防:禁煙・節酒
飲酒習慣の是正や、禁煙の指導を行います。上記の報告では喫煙既往はいびきや呼吸障害のリスクにならないことも報告されていますので、これからの禁煙も効果的な予防策といえるでしょう。
特徴⑤:薬剤性(抗不安薬・睡眠薬)
原因:咽頭筋群の弛緩
一部の医薬品はいびきや無呼吸を悪化させます。特に睡眠薬・抗不安薬として処方される「ベンゾジアゼピン系抗不安薬(レンドルミン®、デパス®など多数)」は咽頭筋群の弛緩を引き起こし、いびきの悪化が考えられます。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは夜間の息苦しさから「日中の眠気」を悩んでいらっしゃいますので一部の睡眠薬がかえって無呼吸の原因となっている悪循環を断ち切る必要があります。
予防:減薬・代替薬・無呼吸への治療
薬の減量を行います。ベンゾジアゼピン系睡抗不安薬は急に中止すると離脱症状が出る恐れがあるで徐々に減量を行います。眠気の原因が気道狭窄なので、気道改善の治療(CPAP、マウスピース、レーザー、外科手術など)を行っていくことが望ましいといえます。
また、いびきの悪化とは無関係な別種類の睡眠薬(非ベンゾジアゼピン系抗不安薬やメラトニン受容体作動薬)への変更も対策の一つでしょう。
さいごに:あなたに合った治療法を考えよう
たくさんの原因や予防策が出てきました。個人的には、どれか一つを突き詰めて行うより、それぞれを組み合わせていくほうがつらくなく効果的だと考えています。無呼吸が減り健やかな夜が近づいてくるよう一緒に予防策を講じていきましょう。